2008年

6月28日

3.ヒマラヤニスト

1:50車の音で目が覚め4〜5人ぐらいの声がする.
「誰がこんな時間に?」と外を見ると「マウンテンガイドサービス」と書いた車が停車していた。
疲れきった私はビールを飲みかけで眠りについていた。
到着したパーティーの宴会が始まり楽しそうだが私はまた死んだように眠った。

5:00隣の物音で目が覚めテントから這い出す.
すると山岳用テントが4張り増えていた。
あいさつに行きしばらく話しをしていると、まだ起きてないけどこの中にエベレストに登った人が居ると言う。
ミーハーな私、さっそく百名山ガイドブックの裏にサインを頼んだ。
世界最高峰 エベレスト8848m 再登頂
死ぬまで闘う! 山下 健夫
このサインで山下さんがもう一度エベレストに挑戦しようとしているのが分かった。
エベレストを登った人に偶然に出会うなんて、無駄に旅はするもんですね。

5:50朝ごはんを食べ出発の準備を始める。
すでに雨が降り出しみんながどんなルートで登るのか確認する。
山下さんはお客さんを連れた講習会なので少し難易度の高いルートから登るらしい。
準備をしながら出発前の山下さんの講義を盗み聞きした。
講義が終わり私に「いくぞ!」と声を掛け登って行った。

7:40阿蘇山高岳(1592m)雨の降るなか山頂にアタックを開始。
今日はテントや寝袋類をカブに載せザックの重さはたぶん20キロぐらい。

先に出発した山下さんのパーティーが遠くに見えた。
私の選んだルートはロープウェイを見上げながらの遊歩道。

8:30ロープウェイの終点を通り過ぎ東火口展望所へ向かう。

8:50雨は激しさを増し視界は悪い。
火口が見える場所まで来たんだろうけどまったく見えない。
しばらくこの辺をさまよった。

9:20たぶんここからが高岳山頂への登山道。
GPSにこの地点を登録して出発。

途中の中岳までペンキを目印に尾根を歩くが火口側から吹き上げる強烈な雨に風。
20キロのザックを背負う私の体が反対側の谷にもって行かれそうになる。
雨はバイクで50キロ走行中に直接肌に受ける強さに似ている。
それに女の人のような声が風に乗って聞こえてくる。

9:52中岳に到着。
あとで写真を見ていたら緑色の写真が1枚あった。
このあたりでデジカメが水没!勝手に電源が入ったりしだす。

10:05高岳まであと100m地点。
「無事に帰らせて下さい。」とケルンに石を積んだ。

10:20阿蘇山高岳(1592m)山下さんに勇気をもらい登頂に成功しました。
濃霧で何も見えなく看板は落ちてるし、阿蘇の頂上とわからなかった。

山頂は風が強くカブを出すのに一苦労。
カブの登頂を撮影し、行動食のカロリーメイトを食べて10:25下山を開始した。

10:40さっき積んだケルンを通り過ぎ下る。
そして11:10中岳を少し下った付近で、熟年の夫婦とすれ違う。
「この先は風が強く危険です。」と告げてまた下る。

11:35さっきの夫婦が中岳から引き返してきて追い抜かれる。
11:50ロープウェイ乗り場で休憩、料金大人750円乗ろうか迷った。
ここには高年齢の男女10人ぐらいのパーティーが休憩していた。

12:25ロープウェイには乗らずまた遊歩道をトボトボ下っていると「ピィーッ!」と笛の音がする。
「あれは絶対山下さんだ!」私はみんなに向かって大きく手を振った。
先頭を下る山下さんの動きは素人の私が遠めから見ても、他とは完全に違いスムーズで綺麗な惚れ惚れする下り方だった。

12:40全身ずぶ濡れになって登山口まで下りパッキングをしながら山下さんを待つ。
しばらくすると山下さん達も下りてきて退避壕がにぎやかになった。
そしてロープウェイ乗り場で見たパーティーも下りてきて、退避壕は20人近い人で溢れた。

溢れかえった退避壕でカブと私に注目が集まり、山下さんと会話があまり出来なかった。
「今日は湯布院にある金鱗湖に泊まりなさい。」と13:15山下さんは帰って行った。

アルピニスト 山下健夫 (1949年生れ)
・北九州市小倉南区在住
・九州マウンテンガイドサービス 山下ガイド事務所 代表

29歳にて初めてヒマラヤデビュー
1981年:ニルギリ北峰7025m遠征(ネパール)
1983年:チョオュー8201m遠征(ネパール)
1986年:チョオュー8201m遠征(ネパール)
1981年以降毎年1〜2回ネパールの親睦トレッキングを今日まで実践している。
海外登山歴はマッキンリー、ヨーロッパアルプス、アジアの山々等。
2000年:エベレスト8848m登頂(単身)日本人89人目
2003年:エベレスト8848m(敗退:8500m)
2006年:エベレスト8848m登頂(単身)2回登頂日本人9人目
2000年のエベレスト登頂以後、山下健夫登山ガイド事務所を開設
2000年よりエベレスト登頂成功の記念として、「山ちゃん塾」を主催。
今日まで続いている。
そしてサインにも書いてある「再登頂、死ぬまで闘う!」の文字は確実に3度目を狙っている。

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